若尾圭介とボストン交響楽団の仲間たち

(5-9-02)
@トッパンホール

曲目

四重奏曲 変ロ長調 作品8-6(J.C.バッハ)
アンダンテ
テンポ・ディ・メヌエット
幻想曲 作品2(ブリテン)
五重奏曲 ト短調 作品39(プロコフィエフ)
T テーマ(モデラート)―変奏1(リステッソ・テンポ)―変奏2 (ヴィヴァーチェ)
U アンダンテ・エネルジコ
V アレグロ・ソステヌート、マ・コンブリオ
W アダージョ・ペザンテ
X アレグロ・プレシピタート、マ・ノン・トロッポ・プレスト
Y アンダンティーノ
チェロとコントラバスのための二重奏曲(ロッシーニ)
T アレグロ
U アンダンテ・モルト
V アレグロ
オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K370 (モーツァルト)
T アレグロ
U アダージョ
V ロンド


英文科の友達アツミが通ってる教会に、ボストン交響楽団準主席 オーボエ奏者・若尾圭介氏の師匠がいるらしいです。
「教え子のコンサートがあるんだけど、どう?」
とチラシを渡され、そういや703xがオーボエを吹いていたなぁと思い出し、 声をかけてくれました。感謝。

若尾氏の存在を初めて知ったのは高2の秋。横浜美術館でのコンサートに 行ったときです。それはJ.ウィリアムスの曲ばかりやるコンサートでした。 当時の文化祭でSTAR WARSメドレーをやることになっていたから、参考にと 行ったのでした。豪快な吹き方、音色、すべてに魅了されました。

本日のコンサートで最初の曲は、J.S.バッハの20人目の子(!)、 ヨハン・クリスティアンの作。1772年にフルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、 チェロの為に書かれた四重奏曲です。原曲のフルートの音を意識してなのか、 オーボエの音の柔らかさに驚きました。アンダンテは、刻みつづけるチェロ、 ヴァイオリンとヴィオラの絡みなど取っても典型的なバロック音楽。そして テンポ感の良さと気品が共存するメヌエットです。

ブリテンはオーボエをひいきにしていたらしいです。同時に実力も求めて いたと見えて、この15分間の曲の中、最高音は3点ヘ、最低音は1点ロが 出ます。それぞれオーボエという楽器が出せる限界に近い音です。
始まりが変です。チェロがウゴウゴ、それにヴィオラのピチカートが乗り、 ヴァイオリンのトレモロが乗り、やっと出たオーボエのメロディーは 不協和音っぽい。これは…「行進曲風」なの?そしてアラビアっぽい モチーフが交錯し、サティのジムノペディのような雰囲気を醸し出す3弦の アンサンブルがあり、廃工場に響き渡るようなオーボエの独壇場があり、 ドビュッシーのボヘミア舞曲みたいになると、また最初の変なのに戻って 終わります。とにかく飽きない。現代音楽のようだけど、これは面白かった です。

しかしさっきのは序の口で、本当の現代音楽はすぐに来ました。
プロコフィエフ。
「半音階の多用は、パリジャンの雰囲気を表そうとした結果である。複雑な パターンと不協和音とは、一般に認められたものであり、それが私の複雑な 嗜好に対する偏愛を助長したのである。」とご本人。何のこっちゃと思って いたけど、Tの始まりと共に書いてあったことを理解するのでありました。 でろでろお化けのようなクラリネット。うわぁ混沌としてるよ。そして コントラバスの超・低音から始まるUでは、プロコフィエフの他の作品で ある「ピーターと狼」のアヒルを連想させるようなオーボエの低音が 入ったり。エネルジコの名の通り、ユニゾンの刻みはすごい迫力。Vは、 軽やかな管と激しいアタックの弦の対比が印象的。ブィーン、パラリラ パラリラ…暴走族?Wはおどろおどろしい。弦とクラリネットの低音の 伴奏の上を、オーボエが4分音符で動きます。オーボエとクラリネットの 不協和音が響き、急に終わり。何故かそこで解放感を味わうあたし。 狩っぽいXは、コントラバスとクラリネットが思いがけない音を出す。 我らがオーボエは、上ずったのか記譜どおりなのか…3点嬰へまで出た? Yでは、「クラリネットとヴィオラは合わさるとピアノみたいな響きがする」との 新発見。最後は和太鼓みたいな弦の刻みと半音階スケールで終わります。 最後まで慣れなかったわ、あの響き。

休憩を挟んで、コントラバス奏者がスツールに座ったのにびっくりした 二重奏セッション。この曲は、いかにもロッシーニらしく、明るく、美しく、 生き生きとした作品。チェロは派手で華やかな旋律担当。コントラバスの パートも、「通奏低音」のイメージを打ち破ってとても技巧的で、しばしば 旋律を歌っています。

大好きモーツァルトでキメ。これは当時の名オーボエ奏者F.ラムのために 書かれた作品で、オーボエの限界音3点ヘを使っています。しかも、決め所 だけでちょっとだけ。チラリズムの美学。全体的にオーボエが主導権を握り、 あとの3弦はずっと伴奏みたいなもので、オーボエ冥利に尽きる曲です。 Tは、一発でモーツァルトだなって分かる軽やかな運び。Uは短調で、 哀愁を帯びたオーボエの音色がとてもきれい。Vは、Tの元気さに豪華さを 加えた感じ。短いけど何度か出てくる16分音符のレガート・パッセージが 楽しい。

アンコールは、J.S.バッハの「復活祭オラトリオ BWV249」より アダージョ。名指揮者小澤征爾氏に捧ぐ、ということ。

室内楽を知らないアツミもとても喜んでいたし、あたしもオーボエの きれいな音をたくさん聴けて満足しました。弦についてまた少し知ることが できたし、また室内楽の演奏会に行きたいと思います。

ただ帰り道で迷いました。アツミは寮の門限があるので先に帰っており、 方向音痴のあたしはまったく違う方向へ歩き出し…夜9時半を回ったオフィス 街は人っ子一人いなくて怖かった。無事に帰れてよかったです。

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