N響メンバーによる室内楽の夕べ

(8-02-05)
@ミューザ川崎シンフォニーホール

曲目

<クライスラー>
「美しきロスマリン」
「愛の悲しみ」
「愛の喜び」
<ランナー>
「シェーンブルンの人びと」作品196
「モーツァルト党」作品192
「ロマンティックな人びと」作品167
<ヨハン・シュトラウスII世>
「美しき青きドナウ」作品314


会場はJR川崎駅に直結した本格的なコンサートホール・ミューザ川崎。去年できた ばかりの新しくてきれいな所です。オペラ「トスカ」やミュージカル「レ・ミゼラブル」 のコンサートなど、惹かれる演目はこれまでにたくさんあったけどなかなか日程が合わな かったりして、今日が初めてになります。「残業できたらお願い」と上司に言われてたけど 振り切ってこっちに来ちゃいました。だって先約。勤務先から近いので、急いだ割には 時間が余って、ゆっくり食事摂っても間に合いました。残業しても良かったかな。まぁ いいや。

本当は同じ日の昼公演に来たかったんです。それはN響フルメンバーによる「ルスランと リュドミラ」序曲、「モルダウ」、「タンホイザー」序曲、組曲「白鳥の湖」。全曲 好きなんだー!去年までは学生だったから、8月なんて夏休み真っ只中で絶対に来れた はずなんですよね、ちぇ。今回の夜公演は室内楽とは聞いてたけどどういう編成か 知らなくて、プログラムをもらって弦楽五重奏だとわかったのです。コンマスの篠崎史紀 さんは前に若尾圭介さんのオーボエコンサートで見たことあるや。お話もあるというけれど、 どんな感じなんだろう。ドキドキしながら開演を待ちます。客層はシニア多し、でたまに あたしと同じく女性1人で来てる人も。

やっと開演。名ヴァイオリニスト・クライスラーの代表的な弦楽小品3作品から。 自分の楽器だと特性を把握しているから、素晴らしい曲を生み出せるのでしょうね。
「美しきロスマリン」でうきうきスタート!最初のテーマの16分音符が加速していくのが 好き。ところでこの曲みたいに、タイトルに人名が入っていると作曲家はどういう思いで その曲を書いたのかなぁと思いませんか?「ロスマリン」って名前、素敵ですよね。どんな お嬢さんだったのでしょう…。

続けて「愛の悲しみ」で少し雰囲気を落ち着かせて。これ、最初は確かに悲しい雰囲気が 出てるけど、途中の旋律がとても甘いからシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」で 言うsweet sorrowという言葉がぴったりだと思うの。途中でヴァイオリンが半音階で行き来 する辺りなんて、揺れ動く気持ちが表現されてて素敵。切ない恋をしてるときに聴きたい曲 です。

そして一転「愛の喜び」へ。恋愛は悲喜の感情が表裏一体ですね。でもこの曲ってすごい ゴージャスな響きがするせいか、関係ないのに料理番組や芸能人を特集してるワイドショーに 使われたりするのよね…。ちょっと話はわき道にそれましたが、この曲を弾く前にコンマスに よるウィンナワルツのステップの解説がありました。1拍目ぴったり、2拍目若干早める、 3拍目ぴったり。足元に新聞紙を片面広げてあって、その上でステップする感じという説明に 観客は一斉にもそもそ。するとお手本を見せんとばかりにコンマスが演奏しながらくるくると 踊り始めました。客席に降りてみたりと、優雅ながらお茶目で、ちょっと本場の様子を想像 できちゃいました。演奏は、最後の溜めが絶妙な間合いでした。

ウィンナワルツの原型を最初に作り出したのがヨゼフ・ランナー。その楽団は、 ヴァイオリン2台、ヴィオラ1台(かのヨハン・シュトラウスI世)、コントラバス1台と いう構成だったそうです。チェロが入っていない理由の一説は、王様の前で演奏するのに 座って弾くのが失礼だから、ということでした。でも今日は普通に座って弾いてらっしゃい ましたよ。
ランナーの作品も3つ。
最初は「シェーンブルンの人びと」。シェーンブルン宮殿の隣に大きなカジノができて、 そのオープニングイベントで演奏された曲です。街中のカフェにいてこれを聴いた ストラヴィンスキーが、「ペトリューシュカ」のワルツに流用したそうです。そう言われても 「ペトリューシュカ」知らないからどこの部分かわからなかったよ…(笑)家にCD買って あるんですけど、まだ聴いてないの。曲はヴァイオリンのオクターブ上でのハモりや後半の 転調でぞくっとしました。

次に「モーツァルト党(モーツァルティスティ)」。モーツァルトのパロディ。 パロディと言っても、現代のあたしたちが考えるような面白おかしいものではなくて、 オマージュとしての意味合いを持ちます。さて、中身はと言いますと、ほとんどが「魔笛」 から!序曲の始めの三和音、1幕1場でタミーノが大蛇に追いかけられるところ、僧侶の行進、 夜の女王のアリア、ザラストロのアリア、再び三和音、「何て素敵な鈴の音」の後半 (パミーナとパパゲーノの二重唱)、そして序曲の第2テーマを三拍子にアレンジしたもの (これが意外としっくり来るんですよ)。あと「ドン・ジョバンニ」の「手を取り合って」が 入ってたのがわかったけど、その他はミス。でもこれで8割くらい出所がわかったのでは ないかしら。こんな曲があったんだーってもう大感動ですよ。これだけでも来た甲斐あった なぁ。

「ロマンティックな人びと」はランナーの代表作だそうです。ウィンナワルツの揺れる 拍は「生きてる!」って感じがします。機械的に三拍のステップを踏まなければいけないの ではなくて、人間の意志みたいのが尊重されてると思う。この曲でも、憂鬱で切ない曲調が 楽しいものに変わる一瞬、自然にふっと息をつく間があるんです。その息継ぎは休符として わざと記譜されているものではなくて、奏者や踊り手の心で取るもの。良いです。

プログラム最後の曲は「オーストリア第二の国歌」と呼ばれる「美しき青きドナウ」。 パリ万博で初演され、戦後の民衆を勇気付けた曲です。テレビでも良く流れる有名な曲で、 知らない人はいないと思います。現に、それまで居眠りしてたおばさんがこの曲になると いきなり首振ってノリノリになったので(笑) あたしはオーケストラの音に慣れ親しんで いたので、室内楽で聴くのは初めてでした。迫力がなくなっちゃうんじゃないかなぁと 心配したのですが、高・中・低と弦のバランス取れてたので良かったです。何より ウィーンの街中ではこういう編成で聴く方が多いのではないかと思いました。
ところで、日本の第二の国歌って何になるのでしょうね。国歌や国旗のあり方でさえ 揉めてるから、ないのかな。

アンコールにシャンソン「ウィーン 我が夢のまち」が演奏されて終わりました。 何だか生クリームいっぱい乗せたウィンナココアが飲みたくなりました。

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