cappuccino*




















「失礼します」


昌浩が緊張した面持ちで晴明の部屋へと入る。 どうしていいかわからないはあたふたと周りを見渡して、物の怪が頷くのを確認して、一礼して入った。 小さく、物の怪に向かって、ありがと、と礼を述べる。 おうよ、と軽い返事が返ってきた。 どんな人だろう、とは思ったが、一目見て、唖然としてぽかんと口を開いた。 こんなに年をとっていらして、しかもまだ現役の期待の陰陽師、安倍晴明。 何で知らなかったのだろうかと、頭を抱えたくなった。


「はじめまして」


深々と再度一礼。 もうほんとに奇跡のような人だ、と感嘆する。


昌浩はそっとを盗み見た。 安倍晴明を知らないって、何でだろう。 どこから来たのだろうか。 陰陽師、と言っていたけど。 だったら、何でじい様を知らないのだろう。 色々な疑問がぐるぐると頭の中を回り、昌浩は暫く絶句していた。


晴明を見つめて、ははっきりとした口調で名乗る。


「私は、藤 と申します。一応陰陽師、です」 「ほう、殿か」


にこにこと楽しそうに笑う晴明は、ふとまじめな顔になった。


「して、どこからいらしたのかな?」


はどう見ても昌浩より年下だ。彰子と同じぐらいか。 そんな少女が、しかも一人で、妖と退治していた、と式を飛ばしてみていたが。


「それが……」


は少し口をつぐみ、考えるように人差し指を唇に当てた。 あどけない表情。 一つ一つのしぐさが可愛らしい。


「わからないんです」


困ったように眉根を寄せて、うーん、とは唸った。


「そうか」


晴明はにこにこと笑いながら、昌浩のほうを向いた。


「昌浩」 「はい?」


絶句していた昌浩は、急に呼ばれて居住まいを正した。 物の怪が座ったまま、晴明を見上げた。


殿を空いている部屋に案内しろ」


暫く呆然とした昌浩は、物の怪のおーい、昌浩やーい、と言う呼びかけで我に返った。


「……はい?」





殿」 「はい」


はぱっと顔を上げた。


ここに暫く住むといい」


突然の申し出に、はぱあっと顔をほころばせた。 嬉しそうに微笑む。


「ありがとう、ございます!」


一礼して、晴明の顔を見た。 彼は、ずっと笑っていた。





唐突に、横から声がかかって、はゆっくり横を向く。 直立した物の怪と、昌浩がこちらを見つめていた。


「よろしく」


昌浩が、微笑して言った。


「よろしく、お願いしますっ」


いささか緊張したように早口で、舌をかみそうになりながらは礼をした。


「おうよ!」


物の怪がにまっと笑った。



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