一途

「ウォンカさんって本ッ当にお菓子が好きなのね」

 ホットチョコレートにマシュマロを浮かべ、ピンクの砂糖で出来たティースプーンでそれをかき回しながらチョコレートの掛かったクッキーを頬張っている……。
 そんな無茶苦茶なウォンカ氏を見ながら、娘はふぅ、と息を吐いた。
 見ているだけで全身が砂糖漬けになりそうだ。同じく飲んでいるホットチョコレート――もちろんマシュマロなど入れていない――が、やけにさっぱり喉を落ちる。

 この途方もなく脂質と糖分とカロリー過多な食生活で、どうしてこの人は身体を壊さないのだろう?
 どちらかと言えば細長いウォンカの体型を思い浮かべて、彼女はまたため息を吐いた。

「毎日三食お菓子でも、あなたなら大丈夫そうだわ」
「ああ、当たり前だね」
 ほのかな皮肉の影など気付きもせずに、彼は顔も上げずに返事をした。
 凄い勢いでレシピを書き連ねているその羽根ペンも、噛ると甘いハッカ飴。インクがチョコでないのが、せめてもの救いだ。

「お菓子ほど最高なものはこの世にないよ! 僕の作った最高のお菓子を毎日好きなだけ、しなびたピクルスやゲロみたいなポリッジなんて一欠けらも食べなくていい!
 これ程の幸せが、他にあるかい?」
「まあ確かに、そうかも知れない」
「ほらね」
 勝ち誇って口の端を持ち上げるウォンカを見ながら、彼ご自慢のチョコレートをすする。

「でもたまにはローストチキンも食べたいな。熱々のマッシュポテトにグレービーソースも美味しいし、ピクルスだって漬けたてなら悪くないわよ。
 あるいは、生のセロリを丸かじり!とか」
「へぇぇー、君って変わってるな」
 明らかに馬鹿にしたような口調。きっとウォンカはセロリなんかごめんだね!と思っているに違いない。
 娘は肩を竦めて、チョコレートのようなポニーテールを揺らした。

「セロリの次にあなたのチョコを食べた方が、きっともっと甘くて美味しいと思うけど?」
「それって僕のチョコが飽きの来る味って事かい?」
「泣いてる子にはハグとキスを、って意味」

 ウォンカはようやく顔を上げて、娘をまじまじと見つめた。
 砂糖漬けのスミレのような綺麗な瞳を見返しながら、娘はマグカップを持ち上げる。



「君って、やっぱり変わってるな」
 世界一変わり者のウォンカには適わない――そう思いながら、彼女はいちご色の瞳をにっこりと細めた。
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