Short Short

 読み終わった最新号の雑誌を閉じて、あたしは頭を後ろに倒した。
 ベッドの横板に背中を預けて座っているから、そうすると頭はベッドの上に乗る事になる。更に、あたしが座っているのは枕とは反対側の端。
 と言う事は、ベッドにだらしなく寝そべっている三千也の足の裏に、顔が近付くと言う事だ。

 邪魔なそれを手で払うと、彼はわざと足を返してあたしの頭を小突いてきた。
「何すんのよ」
「こっちのセリフだっての。お前に何の権利があって俺の自由を妨げんだよ」
「邪魔なのよ」
「はっ、文句があるなら出てけよな!」

 今更であるが、あたしの幼なじみは顔と性格が比例しない。日本人離れした顔立ち、揃った長い睫毛、優雅な仕草……。
 見かけだけ見れば天使のようだが、中身は悪魔だ。しかもガキ臭い。
 そりゃ確かにここは彼の部屋で、どんな格好で何をしようが自由だろう。だが、普通、人はそれを屁理屈と呼ぶのだ。

 身体ごと振り返って、彼を見つめた。
 しなやかな身体はすっかり緩みきって、ベッドに居心地良く収まっている。梳いたらさらりと掌から零れそうな、長い髪はシーツの上に散っている。色素が薄いために煙って見える瞳は、今は意地悪そうに歪んでいる。

「何だよ?」
「…………」

 あたしはにっこりと彼に微笑む。
 そして、無言のままに雑誌を丸め、そのお美しい顔めがけて振り下ろしたのだった。
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