包括指定の可能性

 これは、特定の雑誌が条例における有害図書等を包括指定する基準を満たすかどうかについて、ある程度詳細に検討した結果である。このhtmlファイル中のすべての記述は、明記なき限り、個別指定についての検討を含まない。
 ここでの検討の趣旨故に、印刷物でないものは無視される。ここでは、検討の対象となるもののうち中心的なものについて、個々の条例の用語に関わらず、引用を除き有害図書と記す。各条例の関係箇所は別頁以下に抜粋した通りである。
 なお、以下は、論理構造に基づかず、予備知識のない読者が順を追って読むことを前提に構成されている。
 このファイルは、2017年12月に公開され、何度か補訂された。

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条例

 一般的な状況について、始めに確認する。その出版物に何かが一定量を越えて含まれるとき、有害図書等として包括指定の対象とされる。この制度は東京・長野以外の都道府県条例に存在する。うち長野は有害図書に関する制度を有さない。また、兵庫は基準を規則に委任している。基準は主として率と頁数の少なくとも一方によって定められ、北海道・青森・宮城・京都・和歌山・島根・長崎・宮崎が率についてのみを定める他は双方の定めを有する。その閾値は、都道府県により、率は1/10から1/3、頁は10から20とされる。これ以上詳しくは、以下で必要に応じて扱う。

千葉県

千葉県青少年健全育成条例 抄
第10条 (有害図書等の指定及び販売等の禁止) 抄
A 図書等で次の各号のいずれかに該当するものは、前項の規定による指定がない場合であつても有害図書等とする。
 一 書籍又は雑誌であつて、全裸、半裸若しくはこれらに近い状態での卑わいな姿態又は性交若しくはこれに類する性行為(以下「卑わいな姿態等」という。)を被写体とした写真又は描写した絵で規則で定めるものを掲載するページ(表紙を含む。以下この号及び次号において同じ。)の数が、当該書籍又は雑誌のページの総数の5分の1以上を占めるもの
 二 書籍又は雑誌(前号に該当するものを除く。)であつて、卑わいな姿態等を被写体とした写真又は描写した絵で規則で定めるものを掲載するページの数が20ページ以上あるもの。ただし、当該書籍又は雑誌の内容が主として読者の好色的興味に訴えるものでないと認められる場合における当該書籍又は雑誌を除く
(以下各号略)

 千葉県が定める包括指定の基準は、上掲の通りである。下線部の如き内容のものが量的基準を満たせば、その出版物は有害図書等として扱われる。うち頁数の基準に関しては、除外の要件が加わっている。

千葉県青少年健全育成条例施行規則 抄
第2条の2 (有害図書等とする図書等の内容) 抄
@ 条例第十条第二項第一号から第四号までに規定する規則で定める写真又は絵は、次の各号のいずれかに該当するものを被写体とした写真又は描写した絵(陰部を覆い、ぼかし、又は塗りつぶしているものを含む。)とする。
 一 全裸、半裸又はこれらに近い状態での卑わいな姿態で次のいずれかに該当するもの
  イ 大たい部を開いた姿態
  ロ 陰部、でん部又は乳房を誇示した姿態
  ハ 愛ぶの姿態又はこれを連想させる姿態
  ニ 自慰の姿態
  ホ 排せつの姿態
  ヘ 緊縛の姿態
 二 性交又はこれに類する性行為で次のいずれかに該当するもの
  イ 性交又はこれを連想させる行為
  ロ ごうかんその他のりよう辱行為
  ハ 同性間の行為
  ニ 変態性欲に基づく行為

 施行規則は、包括指定の要件を満たすべき描写について上掲の如く列挙する。第2条の2第一号が定める裸体等については、イないしヘに含まれる描写でない限り指定の前提とならない。他方で、性交等の描写については、第二号が列挙するものに該当する限り指定の前提から除かれない。このうち変態性欲に基づく行為については今日の一般的語義からは過不足のない解釈が困難である。もっとも、そのような評価が可能とされる行為のうち、「性交又はこれに類する性行為」だけを採り上げれば足りる。
 要するに、一人の姿態なら一定のものに限って、二人の姿態ならば愛撫の他同性間を含む性交とその類似行為について広く、それぞれの描写を有害性を判定する基礎とするのが千葉県条例の態度である。
 ここで、予備知識がなければ、特に注意を要する点がある。裸体とか親密さの描写は、それのみによって有害性の根拠とはされていないことである。条例の基準は、あくまで限定的な指向で組み立てられている。

その他一般

 千葉県の仕組みは、ある程度平均的である。とりわけ、変態性欲のような解釈に難のある文言すら、各地の条例ないしその施行規則にしばしば見られるという意味で、特殊ではない。
 各地の条例は、細部こそ異なれど概ね似ている。個別指定と異なり、性描写を含む絵画と写真のみを指定の基礎とする点が、特に明瞭な重なりの一つである。小さな違いとしては、「人間の尊厳を害し、又は人格を著しく傷つけるおそれのある」ことを包括指定の要件に加える岩手県条例第10条の表現とか、「卑わいな姿態等」を「性的感情を刺激する写真等」と言い換える山形県条例第8条等を例示できる。あるいは、包括指定全体について「その内容が主として好色的興味に訴えるものでないと認められるものについては、この限りでない。」とする茨城県条例第16条第2項や同旨の山梨県条例第5条第6項とか、千葉県条例第10条第2項第二号と異なり一定のものの除外について定めない群馬県条例第14条第3項・埼玉県条例第11条第2項等のような、具体的な要件に影響し得る相違も見られる。しかし、例外なく自主規制を尊重し過剰な介入に抑制的でありなおかつあくまで青少年保護を目的とする制度全体の趣旨からすれば、それらの相違が実際の判断に及ぼすべき影響は些少ないし皆無であると見ることも可能である。

大阪府

 一例として、大阪府条例を挙げる。
大阪府青少年健全育成条例 抄
第13条 (有害な図書類の指定) 抄
A 前項の規定にかかわらず、次に掲げるものは、青少年に有害な図書類とする。ただし、その内容が主として読者又は視聴者の性的感情を刺激するものでないと認められるものについては、この限りでない。
 一 書籍、雑誌、コンパクトディスク、デジタルバーサタイルディスクその他これらに類するもの(以下「書籍等」という。)であって、次に掲げるものを描写し、又は撮影した図画、写真等を掲載し、又は記録するページ(表紙を含む。以下同じ。)等の数が当該書籍等のページ等の総数の十分の一又は合わせて十ページ以上を占めるもの
  イ 全裸又は半裸での卑わいな姿態で、次に掲げるもの(陰部又は陰毛を覆い、ぼかし、又は塗りつぶしている場合を含む。)
   一 陰部又は陰毛を露出し、又は強調した姿態
   二 でん部を露出し、又は強調した姿態
   三 自慰の姿態
   四 女性の排せつの姿態
   五 陰部、胸部又はでん部へのせっぷん又はこれらへの愛ぶの姿態
  ロ 性交又はこれに類する性行為で、次に掲げるもの(陰部又は陰毛を覆い、ぼかし、又は塗りつぶしている場合を含む。)
   一 性交又は性交を明らかに連想させる行為
   二 サディズム又はマゾヒズムによる性行為
   三 強姦若しくは強姦を明らかに連想させる行為又は強制わいせつ行為
(以下各号略)

 この大阪府条例は、一定の描写を包括指定の根拠からまとめて除外する。そして、千葉県等の用語法に沿って「性交」と「性行為」の語義が同性愛を含まないと解するならば、それらの描写は有害性を基礎づけない。同時に、愛撫については部位が明示的に限定されている。
 他方で、取締の対象が千葉県と比べて拡張されている部分もある。量的基準は千葉県の半分で足りるとされる。
 強弱に収まらない相違も見られる。この条例も、一部の「明らかに連想させる行為」を具体的行為と同一視している。この点を千葉県と比較するとき、愛撫について欠け、性交について等しく、強姦について拡張されている。また、変態性欲に代えてSMが明示されている。
 ここでこの条例を示す意義は、条例間の相違が限られていることの例証である。

表紙

 新潟・岐阜・三重・兵庫・愛媛・福岡・熊本の各条例は、表紙の内容のみを根拠とする包括指定の定めを置く。
新潟県青少年健全育成条例 抄
第17条 (図書類の指定等及び販売等の制限) 抄
A 図書類であつて次の各号のいずれかに該当するものは、前項の規定による指定がない場合であつても販売等制限図書類とする。
 一 全裸、半裸若しくはこれらに近い状態での卑わいな姿態又は性交若しくはこれに類する性行為(以下「卑わいな姿態等」という。)を被写体とした写真又は描写した絵で、規則で定めるもの(これらを印刷したものを含む。)
 四 その表紙又は包装箱その他の包装の用に供されている物に第一号に掲げるものを掲載しているもの

新潟県青少年健全育成条例施行規則 抄
第8条 (販売等制限図書類等とする図書類等の内容) 抄
@ 条例第17条第2項第一号に規定する規則で定める写真又は絵は、次の各号のいずれかに該当するものを被写体とした写真又は描写した絵(陰部を覆い、ぼかし、又は塗りつぶした写真又は絵を含む。)とする。
(各号略)

岐阜県青少年健全育成条例 抄
第11条 (有害図書類等の指定等) 抄
A 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げるものは、有害図書類等とする。
 三 図書類又はがん具等(以下「図書類等」という。)で、その表紙又は包装箱その他の包装の用に供されている物に掲載する特に卑わいな姿態若しくは性行為を被写体とした写真又はこれらを描写した絵が、規則で定めるところにより知事が指定した内容のものと認められるもの

 それらの定める質的基準は、表紙に限られないものと異ならない。

小括

 包括指定は、多少の表現のずれが諸条例の間に見られるものの、ここで個別に扱った例とおおよそ似た要件を基礎としてなされる。その主たる要件は頁数ないし割合であり、一部の地域でのみ表紙のみによる判定が加わる。なお、雑誌類を主に扱う限り不要であるため細かい言及を省くが、一枚ものの写真等を有害図書に含める例も見られる。

 以下、誤った予備知識を持つ読者のために、その一部を特に注意的に確認する。
 包括指定のためには、単なるヌード写真の存在は意味を持たない。エロ本等に見られるそのようなものは、被写体が裸体であること以外の何らかの要件によって指定に関連づけられる。
 また、被写体が裸体であることは、必要的ではない。性交等の行為に関連付けられた要件は、一般に着衣の有無を問わないからである。概ね完全な着衣に見える人物だけが被写体とされても、同時に性交中であることが描写されているならば、包括指定のための要件を満たすものとされ得る。

実例

 実例について調査結果を記し、これらが要件を満たすか否かを検討する。なお、各検体について特に当該号を明示すべきときは、「本号」と記す。

方法と基準

 まず、検体となるべき雑誌等を収集した。その際、手元に存在した一部の漫画誌以外は、それっぽいものから多品種を選定すべきことを前提に、入った店の該当する区画で手近なところに陳列されていたものを適当に選択した。即ち、検証の性質上完全にランダムな選択をすることが不可能であるため、「だいたいこういうものの中で手前または上にあること」を優先して取得する条件とした。なお、副次的に、比較用の古いもの以外については最近2年以内程度の製品を用い、かつ、極度に高額なものを用いずに済ませるようにした。
 それらに含まれる描写について、千葉県条例を主たる直接の基準としてその基準を満たすものの少なくとも一部を目視により数えた。その際、頻出しまたはより判別が容易な基準を優先した。これによって包括指定の対象となり得ることが確認できたものを除いては、その基準を満たす可能性について更に検討した。末尾には、全道府県を前提とした指定の可能性について簡潔に記した。
 なお、以下では、原則として、頁数について当該頁内への出現をもって1として数えた。しかし、頁内での面積比を基準として計算すれば、以下と異なり相当に小さい値を得ることが可能となる。このような把握に基づく検討は、一部についてのみなした。

週刊少年ジャンプ2017年50号

 男女が一つの布団に入っている描写が10頁に渡って見られる(248-257頁)。ただし、着衣の状態であり、性交等の性的行為がなされていないことが前後も含めて描写されている。この他、半裸で股を開き気味の描写(301頁)とか、上下の下着を見せて半裸になりつつある状態の扇情的描写と見ることができるもの(460-461頁)が存在する。仮にこれらが総て有害性の基礎となるとすれば、表紙等を含めて498頁中の最大13頁であり、10頁で足りるとする道府県における包括指定が可能かも知れない。しかし、ここから性交を想像させない同衾10頁を除けば残るは3頁である。これらが要件を満たす描写であるとしても、いずれの包括指定の要件も満たされない。
 表紙には、他人と干渉し合わない着衣の人物または顔の部分しか描かれていない。
判定:有害図書扱いはほぼ不可能。

週刊少年ジャンプ2017年51号

 該当する描写はない。強いて近いものを挙げるとしても、不自然な着衣で乳房の外延とパンツが見える描写1件1頁のみである(170頁)。他にこれに近いものを挙げるとしても、高校生程度の3人が脚を広げず立つ水着姿の描写(167頁)と、語義を拡張すれば陵辱の途上と見られないこともない描写(343頁)が存する程度である。仮にこれらが総て有害性の基礎となるとしても、表紙等を含めて466頁の中の3頁に過ぎないため、いずれの包括指定の要件をも満たさない。
 表紙には、互いに接触し合わない着衣の人物しか描かれていない。
判定:有害図書扱いはほぼ不可能。

ヤングマガジン2018年2・3合併号

 青年漫画誌である。
 アイドルのグラビアは着衣の図を中心とし、下着の図でも、身体は胴が透けない布に覆われている。漫画において、要件を満たし得るものは、性交2頁(81・184頁)しか存在しない。これに至らない表現も、着衣での自慰(440-441頁)・着衣での愛撫(452頁)・全裸とはいえ浴槽の水が乳首以下を隠している等のためわいせつとされ得ない図(23・24・90・91・225・226頁)・水着ないし下着で胸部を突き出したものと理解できる図(67・69頁)等、限定的である。
 表紙は、大小とりまぜ、写真と絵がいずれも含まれるものの、着衣の人物の図のみである。
判定:有害図書扱いはほぼ不可能。

フライデー2017年12月22日号

 表紙を含めて96頁から成る写真週刊誌である。性交と類似行為や乳首・陰部を露出した全裸の表現はない。
 乳首を隠した全裸(82・84頁)・乳首を隠した半裸(81頁)・透ける乳首(48頁)とか、胴を覆っていない水着または下着(7・16-17・46・47・69・70・72-73・74・75・76・85・87頁)、あるいは、胴を覆っているかそうでないとしても覆っていないことを確認できない水着または下着(6・10・11・41・42-43頁)といった表現が、包括指定の要件に近いものとして観察され得る程度である。これらを合算すれば24頁となるものの、指定の根拠とするためには、一定の部位の千葉県条例にいう誇示を認定する必要がある。また、一定の内容が1/3を越えることが要件となる同県における包括指定は、これら総てが指定の根拠となるとしてもなお不可能である。
 表紙には着衣の人物像と顔のアップのみが使用されている。
判定:有害図書扱いには無理がある。

週刊プレイボーイ2017年46号

 ここでは、付録DVDを無視する。
 最初の水着グラビアは、あまり部位を強調していない(3-10頁)。強いて言えば、@胸部の強調が一部に見られると解することが可能であるものの、姿態全体が不自然でない。次のグラビアは、「ボイン」の文字列を含むキャプションが示す通り、A水着等の胸部を強調している(11-13頁)。ただし、全体として不自然さのない姿態も含む(14頁)。これに続くカラー記事は、不自然さのない水着または着衣の姿態のみを扱う。巻中の水着を含むグラビアには、衣装に実用的な水着としての十分な被覆面積があり、相当にゆるい解釈をもってしてもB脚を開き気味の図(96-97頁)が要件に該当し得る程度である。白黒記事中に、C性交ないし自慰を想像させる表情と姿態の写真が見られる(121頁)。巻末の最初のグラビアには、D胸部の強調を見出し得る図(171頁)とE臀部以下同文(173-174頁)が含まれる。巻末第三のグラビアでは、F陰毛(189・191頁)が描写される。巻末の袋とじでは、ヌードが描写されるものの、特段の強調はない。
 以上のうち、頁を明示したものの合計が18頁、うち明らかに千葉県の要件を満たすものは存在せず、推定を加えてCが、陰毛を陰部に含めばFがそれぞれ該当するとしても、計3頁にとどまる。全体が196頁からなる本誌を包括指定の対象と捉えるためには、千葉県の要件をゆるやかに解してもなお、それらしき表現が少なくとも2ページ不足する。そして、かような解釈に拠らず、制度趣旨を踏まえた理解をすれば、本号を有害図書とすることは到底できない。
 もっとも、要件をゆるやかに把握すれば、状況は変化する。例えば15頁に出現するにとどまるセミヌード・ヌードに水着等のうち露出が多いものを加えて包括指定の根拠とすることができれば、この号を包括指定の対象であると断ずることが多くの都道府県で可能となる。率のみを1/3と定める北海道・青森・京都・島根・長崎・宮崎と同1/5の宮城・和歌山についてはともかく、その他の府県で最大20頁の要件を満たすものとして扱うことが、この方法ならば容易である。
 なお、表紙は水着の人物一人の動きのある姿態が大写しとなり、別の水着の像等が小さく加わるものである。この表紙を有害指定の根拠とするには、「誇示」等を認定する必要がある。
判定:有害図書扱いには無理がある。

ホットヘブン関西版437号(2017年11月24日号)

 風俗店を扱う、表紙を含めて100頁に頁数外4頁分の小さいカラーの印刷物が綴じ込まれた情報誌である。表紙には、「書店・コンビニで買える唯一の風俗イベント&クーポン誌!!」と書かれている。確かに報告者は、同誌ないしその他地方版が少なくとも過去にコンビニや駅売店で売られていた例を確認している。ただし、地域や店舗の限定は存した。また、現状の詳細について報告者は知らない。
 広告を含めた誌面において裸体の描写はなされず、下着姿から着衣に至るまでの人物の写真が使用されるにとどまっている。性交ないし類似行為の描写も見られない。それ故、本号を有害図書とするためには、相当の量の千葉県条例施行規則第2条の2第1項第一号のイないしヘに該当する表現が「半裸またはこれに近い状態」でなされていることを確認せねばならない。
 広告を含むカラーページを見よう。下着姿または下着が見える脱げかけの状態で胸の谷間を明示ないし強調した図の出現は、20頁を超える(2・3・7・8・9・12・14・16・17・18・19・21・25・43・45・50・51・52・53・55頁等)。もっとも、このうち胸部のみを被写体とする図は例外的である(7頁)。突き出す等して臀部を強調していると理解できる図は、下着姿(7・57頁)と下半身については下着のみ(75頁)のものが少量存在する。大腿部を開いた姿態と呼べる描写は存せず、最も開かれた図(84頁)においても30度程度開いて正座を崩した状態の不自然でないものに過ぎない。愛撫・自慰・排泄・緊縛とこれに類する姿態も見られない。陰部については、強いて言えば脚の付け根の線より狭い範囲の下着を着用した人物の太股上端付近より上の描写(89頁)に強調を見出すことが可能である。
 白黒印刷の部分についても、写真が用いられるものの、カラー頁と同様の限定的な表現のみがなされている。
 体型次第で自然になされ得る程度に一部を強調する下着姿の描写に「誇示」を見出さない限り、千葉県条例の定めに基づいて本号を包括指定の対象とすることはできない。
 なお、表紙には着衣の人物の胸から上の描写しか存在しない。
判定:有害図書扱いには無理がある。

週刊実話ザ・タブー2017年6月2日号

 表紙を含めて232頁から成る、週刊実話の2017年6月2日増刊号である。
 排泄の姿態・別掲する頁を除いた太股を開いた姿態・同性間の行為・明らかな陵辱行為は見られない。性器付近が明瞭でなくとも二人以上が描写された性交として十分に理解可能な図は、15頁に出現する(5・33・4456599394103104142-143159160・199・222頁。下線は漫画等の絵で白黒、太字は白黒の写真である。本号について以下も同様。)。この他、緊縛2頁(122・123頁)、半裸または全裸での自慰3頁(155170・211頁)等が存在する。これで20頁となり、千葉県条例の量的要件が満たされるかに見える。これに既出頁を除いた全裸ないし半裸での愛撫(含む口腔性交)4頁(32・47102・121頁)を加えれば、24頁となる。しかし、漫画等は必ずしも写実的でない。それら12頁を除くならば、残るは12頁である。結局、陰部・臀部・乳房の誇示を8頁に見出さない限り、十分に包括指定の要件を満たすと見ることができない。以上に示さない頁でのその種の描写は、小さい写真を並べてなされたり、写実的でない漫画の描写であったりする。それ故、強調の度合いは低い。全体を見れば、20頁の要件を満たすとの理解すら難しく、該当頁が10頁で足りるとする各条例下においてのみ包括指定の要件が満たされるべきものと捉えるのがせいぜいであろう。
 本号には、主に文字で構成された記事にも性的な内容のものが含まれる。他方で、「読者の好色的興味に訴えるものでない」記事がカラーページにも存在する。それ故、包括指定の対象から外れるべきものとして本号を捉えることが可能である。
 表紙には胸から上の着衣の人物像のみが使用され、裏表紙の広告は下着姿の人物像を含むに留まる。それ故、表紙を根拠として包括指定の要件を満たすと見ることにも無理がある。

 なお、この雑誌は、宮城山梨で個別指定の対象となったことがある。
判定:有害図書扱いがわりかし可能。

実話BUNKAタブー2017年9月号

 実話系月刊誌である。
 水着グラビアの一部に、@脚を開き気味のカット(10-11頁)とかA乳房を強調しているといえなくもないもの(16-18頁)が含まれる。AVの痴漢の場面を抜粋した記事は、個々の写真は小さく行為は一方的であるものの、B胸部または陰部への他人の接触(19-21頁)やC強制的性交(20-21頁・前項と重複あり)の描写を含む。Bの客体は、全頁において一部が半裸または全裸である。次いで、D水着の一般人の写真に、尻または乳を強調したものや太ももを開いたものが含まれる(23-26頁)。また、漫画中にE性交描写が存在する(65・68頁)。また、F強姦未遂と別の性交後の描写が同一頁に存在する(66頁)。さらに、袋とじグラビアに、G愛撫と口腔性交(108頁)・愛撫と口腔成功と膣性交(109頁)の描写が見られる。AVの紹介記事では、H性交等(112-113頁)が描写される。別の記事では、I全裸で太股を開き気味にしたり、尻を突き出したりした姿態が描写される(122頁)。加えて、モノクロ記事中に、J愛撫中であることを文字で示された様態の写真が存在する(133頁)。また、別の記事中にK尻をつかんだ状態を愛撫と見ることもできなくない写真が存在する(134頁)。のみならず、漫画中には、L性交を含む描写(144-147頁)が見られる。また、M広告の画像が胸部を強調している(168頁)。そして、主に水着のグラビア全体が、N裸エプロンの描写等を通じて乳を強調していると見ることができる(203-205頁)。以上の他、広告における性器様の物体の描写が存在するが、仮に無視する。
 これらすべてのページ数を合わせると39頁となるものの、要件の充足に疑いを容れる@AFKNを除くと29頁となる。この値は、表紙を含めて228頁からなる雑誌において2割に足りず、率的要件を満たさないものとされる場合がある。しかし、これと無関係に最も多い20頁という絶対値の要件を満たし、各都道府県の有害図書として包括指定の対象となり得る。ここで基準とした千葉県条例に基づく場合、有害図書たる要件は十分に満たされている。もっとも、Dにおける強調を誇示とするには足りないと捉える等、見方によっては該当頁数が20を越えないとすることが可能ではある。
 なお、仮に実占有面積をもとに頁数を数えるとしても、本号においては要件を満たしまたは満たすと疑われる表現が同一頁を占有しがちであるため、値はあまり小さくならない。
 問題となり得るのは、千葉県条例が「当該書籍又は雑誌の内容が主として読者の好色的興味に訴えるものでないと認められる場合」と表現するような、適用除外の可能性である。この雑誌は、性風俗等を扱いつつ、政治・芸能・社会等の各分野の記事も含む。それ故、除外について定める条例における包括指定の対象とはならないと見ることが可能である。
 なお、表紙に明示的な性的描写はない。強いて言えば、性的行為中と解することが可能な顔の写真が三つ、それぞれ2平方センチ程度の大きさで含まれるに留まる。これを包括指定の根拠として把握することは困難である。

 ところで、この雑誌は、個別指定によって有害図書とされがちである。宮城県和歌山県等の例が、容易に確認される。両県は、包括指定の量的基準を1/5とするのみで頁数を定めていない。それ故、本号と同等のものを有害図書とするためには、個別指定が必要である。なお、両県は、包括指定の対象から何かを除外する文言を条例に含まない。したがって、量的基準が満たされる限りこの雑誌を有害図書扱いすることが容易である。宮崎県の事情も概ね同様である。これらの県においては、このような雑誌を有害図書とするためには、個別指定が唯一の方法である。
 これに対し、秋田県鳥取県鹿児島県等には、不要に見える個別指定をなしている例が見られる。該当号が概ね本号と同様のものであったならば、いずれも何かを除外する定めを含まない各条例は該当号を包括指定の対象とすることが可能である。岐阜県の如く包括指定の対象たることを宣言した例も、実際に見られる。ではなぜ一部で頁数基準を満たして包括指定の対象となるべきものに個別指定がなされたのだろうか。該当する号が包括指定の要件を満たす内容でなかったのかも知れない。この場合、指定は論理的整合性を保つ。そして、仮にそうでないならば、自ら定めた条例の包括指定をないがしろにする扱いであると見ねばなるまい。この点については、各地で実際に指定された号について、当該地域の条例と対照して精査しなければ明らかとならない。
判定:有害図書扱いがわりかし可能。

恋愛白書パステル2017年5月号

 表紙を含めて586頁から成る女性向けとされる漫画雑誌である。絵は例外なく少女漫画的であり、大きな目が描かれる一方で劇画のような細かい線は描かれない。表紙以外はすべて一色で刷られている。各作品は、一つの例外を除いて膣性交を中心とした物語として描かれ、例外となるものにも前戯的描写は含まれる。
 性交描写は61頁に出現する(44・55・56・57・74・75・76・77・78・79・80・81・82・102・103・110・126・127・149・150・167・168・169・223・224・225・226・227・246・247・252・264・265・266・267・280・281・332・333・334・354・355・356・357・387・388・389・390・391・392・421・435・450・451・452・470・471・472・503・544・545頁)。これのみをもってしても、すべての府県の頁数基準を満たし、包括指定の対象たるに足りる。しかし、率のみを要件とする道府県においては、この限りでない。本号には、緊縛等のSM・同性愛・陵辱・排泄・自慰の描写が見られない。せいぜい、少なくとも一方が全裸または下着の一方のみ残存した状態での愛撫22頁(29・42・43・66・67・101・165・166・279・330・331・350・351・352・417・418・419・420・540・541・542・543頁。既出頁を除く。)が見られる程度である。半裸の基準を広げるならば、双方着衣ないし半裸未満(下着の一方より多くが残存)の愛撫45頁(51・52・53・62・63・64・95・97・98・99・141・162・163・193・194・195・196・198・215・219・220・221・222・233・245・263・270・315・316・317・318・319・386・428・432・446・447・449・466・467・469・501・502・538・539頁。既出頁を除く。)の一部が要件を満たすと見ることもできよう。ここまでを足しても128頁であり、1/3を越えるにはまだ足りない。しかし、その他の要件に該当する描写は殆ど見られない。
 量的要件が率的にのみ定められている道府県では、本号を包括指定の対象とするのは困難である。しかし、それ以外においては様相が異なる。

 なお、この雑誌は、北海道宮城岡山等で個別指定され、神奈川で包括指定対象として例示されたことがある。
判定:有害図書扱いがわりかし可能。

DMM2018年1月号

 表紙を含めて180頁から成る総天然色の「世界一のAVマガジン」である。成人向けとの表記はない。なお、付録のDVDを無視する。
 その性質上、膣性交の描写が、記事の体裁(3・6・8-12・14-26・29-42・44・52-60・62-72・77-82頁等、ここまでで61頁・約3/4。)で容易に1/3を越え、明らかな広告にも同様の描写が見られる(2・28頁)。個々の写真は小さいため、場合によっては性交以外の何かであると強弁することは可能かも知れない。しかし、殆どの頁で包括指定の要件を満たし得る描写が複数なされているため、そのような弁明が全体への評価を翻すことは困難である。本号は、全道府県の包括指定の基準を満たす内容であると理解される。
 表紙は、上半身の着衣を持ち上げてブラを少し見せ、下半身は上端を下げ気味にしてパンツのみを着用した陰毛が見えない人物の図である。これを半裸で乳房や陰部を誇示したものと捉えるのは語義的に無理があると考えてよいだろう。

 なお、同誌は、例えば2012年6月号が北海道で2012年7月号が鳥取県でそれぞれ個別指定され、2006年10月号が神奈川県の包括指定対象として例示されている。号ごとの内容の相違等は明らかでないものの、一般には包括指定の要件を満たすことが十分に想像され得る。
判定:有害図書扱いが十分に可能。

働くレディお貸しします vol.26

 「ミリオンムック51プレミアムシリーズ」とされる、B5の、表紙に成人向け表記のない、2016年1月に発行されたDVDつきの雑誌である。全編がカラー印刷で写真が中心の構成である。全体がいわゆるエロ本として構成されているため、包括指定の対象から除外される要件を満たすことはない。他方で、成人指定の表記がないため、コンビニ等でも流通したことが推測される。なお、ここでは、付録DVDを無視する。
 見開きを基準とすれば、広告以外は例外なく下着姿等の弱い半裸以上の描写が見られる。小さめの写真も含めると、膣性交を少なくとも推認させる描写が42頁(9・11・13・14・15・17・19・21・25・26・29・30・33・35・37・38・39・41・43・45・47・49・51・53・55・57・59・60・61・63・65・67・69・71・72・73・77・79・80・81・82・88頁)に見られる。広告中の漫画にも同様の描写が存在する(94頁)。即ち、着衣の度合いを問われない性交描写が100頁中の4割に及んでいる。この他、例えば全裸ないし半裸での自慰らしき図が4頁(6・13・22・23頁)に見られ、うち1頁のみが性交と重複している(13頁)。その他の図も、一部の誇示ないし強調と見ることが不可能ではない。
 仮に上掲の46頁のみを採り上げるとしても、20頁または1/3となる多めの包括指定基準の閾値を既に超えている。これを回避するためには、半分以上の描写について、包括指定の根拠となるべきでないことを説明せねばならない。千葉県の量的要件に照らすならば、46頁中の26頁について、描写が明瞭でなく要件を満たすことが確認できないとでもせねばならない。このような説明は、相当の困難を伴う作業となろう。なお、各道府県の条例には性交を「連想させる行為」等が要件に含まれるのが通例であるため、まだ挿入していないとか結合部が隠れているので性交と言い切れないことは、包括指定の前提を翻す理由とならない。例外たり得るのは、体系そのものが特殊な東京を除いても、山形県(条例施行規則第3条第二号イ)・埼玉県(条例別表第一)・山口県(条例施行規則第3条第二号)程度であり、せいぜい解釈次第で奈良県(条例施行規則第5条第二号)が加わるのみである。
 表紙を特に採り上げるならば、最も大きい写真は着衣で尻を突き出し下着を見せた図である。その他の図も着衣で千葉県条例施行規則第2条の2第1項第一号に該当する姿態を見せるものとか、性交等の途上に見える表情の顔のみが示されたもの等である。これらが指定の根拠となると断ずるには困難がある。

表 性交の各頁内での占有量・率
cm^2cm^2cm^2cm^2
010.002639.6951293.064760.00
020.00270.00520.0077238.052
030.00280.0053224.549780.00
040.0029218.848540.0079289.564
050.003025.7655215.3478033.47
060.00310.00560.008179.417
070.00320.0057279.96282209.446
080.003342.49580.00830.00
09238.252340.0059455.0100840.00
100.0035455.010060172.838850.00
11455.0100360.0061219.248860.00
120.0037140.331620.00870.00
1322.053845.91063104.32388455.0100
14149.53339455.0100640.00890.00
1567.815400.006510.52900.00
160.0041455.0100660.00910.00
17406.689420.0067455.0100920.00
180.0043455.0100680.00930.00
190.00440.0069213.5479444.810
200.004537.48700.00950.00
21159.535460.0071236.352960.00
220.004726.767233.47970.00
230.00480.007332.27980.00
240.0049156.534740.00990.00
25455.0100500.00750.000.00
 占有面積に配慮したとき、これらの値はどの程度減少し、どの程度評価に影響を及ぼし得るだろうか。これを確認するためのデータを、左表に示す。この表では、各頁ごとに性交として認識され得る表現の面積を得(百分の一の位を四捨五入)、参考のために頁内での%(十分の一の位を四捨五入)で示した。なお、大きい写真の一部に食い込むなどしている写真がある場合、それらを大きい写真側の面積から除いていない。これは、大きい写真がそのまま掲載された場合との均衡への配慮である。
 このデータの元となった数値からは、性交の頁数は約19.3となった。これは出現頁43の半数を割る。そして、もしこれらの他の要件を満たす表現がなければ、その要件に1/5以上の率ないし20以上の頁を定めている道府県において包括指定の対象とならない。これらのみを根拠とした包括指定は、閾値を小さく定めた岩手・岐阜・愛知・大阪・奈良・山口・徳島・高知・福岡・佐賀・熊本・大分においてのみ可能である。もっとも、自慰等によって要件を満たす部分が容易に20頁を越えるため、1/3の率のみを量的要件とする道府県以外で本号が包括指定の対象に含まれると解するに支障はない。また、それら性交以外の描写の総量の見積もり方次第では、やはり同様の理解が1/3の条件下ですら成り立つ。もっとも、具体的な要件次第では、包括指定に対する抗弁が成立する余地も残る。

 なお、このシリーズについては、37号が福井県で個別指定されていることを容易に確認できる。

判定:有害図書扱いが十分に可能。

ベッピンスクール1994年8月号

 表紙を含めて164頁から成る昔のエロ本である。一部は白黒で、記事や漫画が掲載されている。グラビアには全裸や露出部分の多い半裸のみならず下着姿等も含まれ、しかし性交そのものはあまり描写されていない。半裸であっても特段の強調のない姿態が通例である。
 @半裸または全裸での明らかな乳房の強調(表2・3・7頁)の他、Aパンツをはいているものの陰部と臀部を突き出した図(4・5頁)・B透けるパンツをはいて股を広げた図(8・9頁)・Cその他の陰毛が見える図(3・6・9・11-15・41・44・45・46・74・78-81・113・118・120・146・148・149・156-157・159頁)・Dある程度一般的な下着で股を開き気味で性器が見えそうな図(23・114・117・138・141頁)・E同性愛として感得可能な全裸での抱擁(11・13・14・15頁)のような表現が存在する。
 グラビア以外にも、要件を満たし得る表現が含まれる。F漫画には、人外による陵辱(51-52・56-57頁)が描かれる。G白黒の記事中には、性交らしき状況の写真(65-67頁)が含まれるものの、結合部は明示されない。HAVの紹介記事中の一部の写真が性交に見えなくもないが、小さく不鮮明で判然としない(132頁)。これらのうち、Fのみが容易に指定の根拠として捉えられる。
 千葉県条例に沿って考えてみよう。AとCについてすべて誇示等を認定せず根拠から排し、GとHも無視するとすれば、包括指定の根拠は18頁に留まる。この値は、20頁または1/5に届かない。本号を包括指定の対象として把握するためには、陰部・臀部・乳房が数ページで誇示されていることを特に認定しなくてはならない。この認定のためには、Cのような陰毛が見えているものを陰部の誇示と呼べるのか等の問題が生じる。他方で、該当が10頁で足りるとする条例においては、概ね本号を包括指定の対象とすることが可能である。
 その表紙は、スカートが異常に短くはない実在しそうな学校制服風の衣装を着用した人物一人の立像である。これを指定の根拠とすることは、一般に不可能である。

 なお、この雑誌は、2000年の107・110号が島根県で2005年の7月号が富山県で、それぞれ有害図書として個別指定の対象となっている。島根の包括指定の量的基準である1/3を満たす困難はともかく、1/5・20頁の富山の基準も超えず、有害図書とするためには個別指定を要したことが推測される。
判定:有害図書扱いがわりかし可能。

検討

 有害図書の包括指定には、可能な限界が曖昧であるという難点がある。このことが、指定されがちであったりそれらと連続的に捉えられたりする出版物に関する実際の扱いの検討から、明らかとなった。この曖昧さは、そもそもの基準に由来し、運用によって増幅されている。
 これらのうち、運用に関する難点は、明らかである。その一つは、包括指定の対象たるか否かを、第一には個別の小売店が判定すべきものとされていることである。この仕組みが陳列の区分に過不足をもたらすことは、容易に想像される。認定が過剰であれば、青少年が受領すべき情報を制限される。対してそれが不十分であれば、条例が許さない青少年への流通が放任される。条例を肯定しつつこのような状況を前提とするならば、限界線上の出版物の扱いについてあまり目くじらを立てないことが、小売店を過剰な介入から守るための可能な解決策となろう。とはいえ、この状態で規制を機能させるためには、量的基準を少なめに設定すべきこととなる。結果として、不要な制限が生じることともなりかねない。
 指定の存否も、整合的でない方法によって示され得る。包括指定の対象となるものが個別指定を受けたと憶測できる事例が存在するのである。厳密に検証することは難しいものの、一般には、このような不要な指定は一々なされないと考えてよさそうである。あるいは、包括指定対象の例示には、機械的な羅列に近いものもあれば、同じ雑誌を既に示したので重複を避けてなされていることが窺われる例も見られる。このような状況下で、全体として何を指定の対象とすべきかの明示には、書かれざるものが含まれていると理解されざるを得ない。
 それでも、包括指定制度は、全体としてはある程度平穏に機能している。それは、だいたい成人向けっぽいものを陳列すべき棚が他と区分されてきた歴史の故である。結果として、小売店では、部分的にはともかく、概ね条例の趣旨に沿う陳列ないし撤去がなされるのが常となってきた。今日の現場を見る限り、ある程度のいい加減さが許容されつつ、大枠として条例の方向性が支持されてきたように見える。様々な立場相互の無用の摩擦を回避するという意味では、現状は尊重されるべきものを含むと捉えるべきこととなろう。
 他方に、規制故の問題も無視できない。例えば、成人向としない名目で、包括指定の基準を満たし得るものが出荷されているのである。それは、一面では、小売店の自主規制に対抗して販路を拡張する手段である。その責任がどのように分担されるべきかは別論としても、規制の存在が抜け道を狙わせていると見るべき状況は明瞭である。

 では、何をどう制限すべきか、あるいはできるのか。条例の方向性を前提に考えるとき、制度自身の明白な難点が浮かび上がる。
 その一つは、規制の対象となる表現を等価としていることである。等価なるが故に、単なる裸体は除かれ、しかし性交の露骨な描写と半裸での尻の強調が等しく扱われもする。このような基準で「有害」性を十分に斟酌した判定が可能であろうかと問わねばなるまい。他方で、現場のために簡素な基準が用意されることが望ましいとう価値判断からは、それら様々な表現が等価とされることにも一定の理由があると見なくてはなるまい。
 もう一つの難点は、諸要件の曖昧さである。例えば、千葉県条例のいう誇示とは何か。あるいは、大阪府条例第13条第2項第一号ロ以下の文理は、性交がなされていると推測できる描写を直ちに性交として把握することを許すのか。そうでないならば指定の抜け道が生まれよう。しかし、推定可能な範囲を安易に広げれば、それはそれでわけのわからないこととなろう。性交等の包括指定の要件となる描写が、推測あるいは説明が曲りなりに可能な範囲へと拡張されるからである。これと関連し、「陰部又は陰毛を覆い、ぼかし、又は塗りつぶしている場合を含む。」という文言のうち、「覆い」は不自然な物体や塗り潰しに限られるのか、それとも着衣とか人体を含むと見てよいのかも、自明の答えを持たない問いである。
 これらの点を解決するためには、定義そのものを可能な限り客観化することと、表現の内容に応じた倍率あるいは点数を定めて頁数計算に反映させることが可能である。このような基準を設けるためには、相当に具体的な内容に関する言及を要するため、現場の判断の困難を減らすことができる。柔らかい表現を大量に含むものを容易に規制の枠組みに取り込めるため、規制者にとっても目的を達し易くなる。もっとも、数値の設定には困難があるかも知れない。また、しかるべき除外要件の定めなしでは、予定外の物件が有害図書に取り込まれるかも知れない。
 これと同時に、「主として読者の好色的興味に訴えるもの」を量的基準抜きで包括指定の対象とすることも考えられてよい。その種の出版物は、多少の抗弁が可能であっても、各地の基準を満たすことが通例だからである。これを前提とするならば、細かい要件はむしろ混乱の原因である。このような理解は、一般的な書店の店頭での陳列状況とも整合する。それ故、書店において特段の混乱を招くことはない。
 以上の例示に限らず、細部をどのように考えるにせよ、具体的な方法論は、様々に可能である。わかりにくさを解消する第一段階として、明瞭な基準を設けることは、不可能ではあるまい。規制本体の曖昧さは、類似品の外延を不用意に広げかねない。何らかの改善が求められると見るのは、さほど不当でもあるまい。その新たな基準は、何らかの立場に基づく規制の程度の変更ではなくおおよその現状維持を前提として検討されるならば、強い反対は得難いことだろう。
 規制の枠組みそのものにも、変更される余地が残る。都道府県単位で定まる基準と指定が、現場の扱いを混乱させる。これを統一することは、細々とした検討と無益な論争の回避という社会的なコストの削減に繋がる。そのためには、条例による規制を少なくとも部分的に排し、国家による法規制がなされるべきと考えるのが自然であろう。しかし、それは唯一の方法ではない。出版物以外についてなされ、一部の条例が制度化している団体規制も可能である。団体規制からの潜脱に何らかの事実上の処罰がなされるならば、そのような振る舞いをする出版者の出現も抑止され得よう。それが有効であるならば、団体規制を前提とした内容に条例を改めるべき働きかけ、軋轢を防止することも可能となろう。
 そして、指定のシステムそのものにも、改善の余地がある。このことが、包括指定の要件と効果からも浮き彫りにされている。
 該当の有無によって当該出版物の運命が分かれる有害図書指定システムの不備は、包括指定の対象となるべきか否かを容易に断じ得ないものの存在を見れば明らかである。出版者には、指定対象でないことを主張すべき動機が常に存在する。他方で都道府県は、それぞれの基準を主張する。この摩擦は、二者択一の制度によって強められる。そこで、中間的な要注意図書とでも呼ぶべきものについて制度化し、有害図書に近いが異なるより寛容な扱いを認めることが考えられる。この方法は、団体による認証とか、団体が定めた基準に基づく出版者の表示によって、とりあえず一方的に導入可能である。これが制度の一部となれば、個々の小売店の判断を前提とする包括指定制度に対し、社会全体の無用なコストを削減することができる。また、その判断が事情に詳しい者によってある程度一括してなされるが故に、多少複雑な要件を設けることも大きな困難とはならない。出版業界は、このような方法論を検討してもよいだろう。また、制度もこれを尊重し、団体規制ないし団体基準による表示をもって有害図書等への該当性が示されたとみなす旨を定めることが可能である。このような方法論は、強い規制を求める側とこれに同意しない側の双方へのそれなりの配慮を含むものとして、考えられる。
 指定の要件が表現の内容に依拠することも、考え方次第では問題である。18歳未満の利用を禁じられた性風俗営業を宣伝するための雑誌が包括指定の要件を満たさないとき、個別指定なしでは青少年がそれらに掲載された情報に接触することを止められない。仮に規制の目的が完全に正当であるならば、このような事態の容認を合理的に説明することができるのだろうか。

 特にコンビニに目を向ければ、以上と異なる問題を発見できる。日本フランチャイズチェーン協会の自主基準は、「各都道府県の指定図書類及び出版倫理協議会の表示図書類は取り扱わない。」旨を定めている。個別指定前の出版物は、包括指定の基準を満たさない限り、後の指定と無関係に「指定図書類」に該当しない状態にある。個別指定は数ヶ月遅れるのが常であるため、事実上この定めと無関係に店舗は指定図書類を販売できる。そして、包括指定の対象であっても、販売は可能である。それを小売店が認識しなければ、指定は存在しないも同然だからである。この常態が継続してきたことは、それが市場の要求であることを示している。換言すれば、個別指定前に売り抜けることを最適とする版元と店舗その他の意思の合致が見出されるのである。もしこの見方が妥当ならば、そして同時に小売店が筋を通そうとするならば、業界は立場を改め、「取り扱わない」との方針を撤廃した上で新たな対処を検討すべきこととなるだろう。現状は、まやかしによって成り立っている。
 類似品をも指定図書類と同視する同協会の姿勢は、更なる奇妙な事態を準備している。外延の明らかでない類似品にまで有害図書呼ばわりを拡張することは、コンビニが週刊少年ジャンプですら売ることを許されない有害図書として扱う可能性を秘めているのである。この点からも、「とにかくそれっぽいものを売らない」という建前だけの宣言の無意味さが確認される。

 大きいお話としての表現の自由はともかくとしても、インフラたる地位を占めた大企業の振舞い方についてのべき論のようなこれまであまり論じられていない問題が、有害図書という小さな話の先に繋がっている。一部の出来事が、そのあたりを灰色で誤魔化してきた歴史を再確認させた。それは同時に、出版界の無策の歴史でもある。その種の商品が今後どのような扱いを受けて行くかは、その影響のみならず同様の立論の可能性を視野に入れた観察が続けられるべきところとなろう。


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