高まる「がん早期発見」の重要性

高まる「超早期発見」の重要性

50億円もの研究費を投じた「がん超早期発見・治療機器の総合研究開発」のプロジェクトを独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募するなど、近年の医療の最前線では、がんの「超早期発見」の重要性に対する認識がますます高まってきています。

従来、がん判定はCTをはじめとする画像診断に頼らざるを得ませんでしたが、画像診断で発見できるがんの大きさは1cmが限界となっており、その1cmに10億個ものがん細胞が存在していることを考えれば、もっと早い段階での発見がベストです。そこで1cmよりも小さいもの、究極的にはわずか1個の細胞の診断も可能にしたいというのが超早期発見のベースにある考え方です。

医療現場における課題と超早期発見のニーズは直結しています。肝がんのように摘出手術を行っても、再発率が高いものがあります。その一因として、1cm以下の小さながんが残っている可能性が考えられます。また、現在の医療技術では治療の難しい膵がんや肺がんなども、より早い段階での処置が可能になれば、治療の可能性は広がるわけです。

さらには患者のQOL(生活の質)の面でも重要です。がん患者は医師から治ったとされても、一生再発のリスクと向き合っていくことになります。超早期発見の技術が確立されれば、例えば「がん細胞は何個以下だから心配要らない」とか「何個以上だから治療が必要」といった診断ができるようになれば、患者を取り巻く環境は大きく変わります。

現在、超早期発見のカギを握っているのは血液検査で、遺伝子・血中がん細胞・タンパク質など、世界中の研究者がさまざまな切り口からその実現へ向かってアプローチを開始しています。

DNAチップで血液中の遺伝子を解析

2009年、胃・大腸などの消化器のがんを採血だけで診断できる新技術を金沢大学のグループが発表して、話題を呼びました。消化器がんに特異的に働く遺伝子を突き止め、9割の精度で判定ができたのです。こうした遺伝子解析は国内外で盛んに進められていますが、そこで大きな役割を果たしているのが遺伝子の働きを測るDNAチップの存在です。

DNAチップは人間の体に約2万2千個あるとされる遺伝子の配列や働きを解析できるツールです。特定の遺伝子の働きを解析することで、がんの検査用ツールとしても活用されています。

金沢大学のグループは現在、消化器がん検出用のDNAチップの作成を進めています。採血した血液からRNAを抽出し、DNAチップを使って消化器がんに特異的な遺伝子の働きを測定するのです。

検査の精度は向上しても、患者は従来の採血と同じ検査を受けるだけでOKですので、人間ドックや健康診断に採用されるようになれば、手軽に消化器がんの有無を知ることができるようになります。

2009年にアメリカで開かれたがんの学会では「血液循環がん細胞」に関する研究が盛り上がりを見せていました。これは、原発巣を離れて、血液中を巡り、別の場所に転移巣を作るがん細胞のことです。アメリカのべリデックス社が、がんの抗体を使って同細胞を捕獲する技術を開発し、研究に弾みをつけました。

ウイルスを利用して血液中からがん細胞も検出

ウイルスを利用して、上記の「血液循環がん細胞」を検出しようとする共同研究が、国立がん研究センター東病院と臨床検査機器メーカー・シスメックスによって進められています。

このウイルスは、がん特有の無限増殖の活性に反応して増殖し、緑色に発光する性質を持っています。採血した血液にこのウイルスを入れて感染させると、がん細胞のみが増殖し、緑色に光ってその存在がわかるという仕組みです。

生きたがん細胞を検出できるという点がこの検査方法の画期的なところで、この技術が進めば、たった1個のがん細胞の発見も可能という話にも現実性が出てきます。

同病院がさらに研究を進めているのが、新発想の腫瘍マーカーの開発です。従来は腫瘍マーカーでがんが疑われても、最終的な確定にはCT検査が必要でした。このため腫瘍マーカーは、実質的にCTで発見できる1cm以上の進行がんの発見を前提に開発されてきました。その前提の発想を変えて、1cm以下の見えないがんを見つけるための研究が進められています。

がんの切除手術をした患者や、慢性肝炎・肝硬変患者の血液を継続的に集め、その中で再発や発症にいたる患者の血清中のタンパク質にどのような変化があったのか、解析を進める計画です。

がんの中でも、膵がんは早期発見が難しいとされていますが、国立がん研究センターと熊本大学発のベンチャー・トランスジェニックは、共同で新たな腫瘍マーカーを開発しました。

膵がん患者の血中タンパク質「α−フィブリノゲン」のアミノ酸・プロリンに水酸化修飾のあることを発見しました。従来の腫瘍マーカーと比較して偽陽性が少なく、より早いステージで発見が期待されることもあって、既に製薬会社から打診を受けているとのことです。

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